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株主権の濫用

会社は、経営者の利益ではなく、会社の共同経営者である株主や投資家の利益を図るために、透明な経営を行い、企業の効率性、生産性を高め、競争に生き残っていく企業体質を作らなければなりません。そのための会社の統治(コーポレートガバナンス)のあり方が昨今問われてきています。

この点に関し、株主が経営を監視するための手段として、商法においても様々なシステムが用意されています。

株主は株式会社の所有者ですから、株主はその地位に応じた権利として株主権を有しています。この株主権を通じて会社の経営チェックが図られます。株主は、最高意思決定機関である株主総会においてなされる議決権(商法241条)の行使を通じて会社の経営をチェックすることができます。そして、この議決権行使に関するいろいろなルールをはじめ、会社経営に不正があるような場合の裁判所への検査役選任請求(商法294条)、株主による総会招集権(商法237条)、株主名簿等の閲覧謄写請求権(商法263条)や株主代表訴訟(商法267条)などのシステムも用意されています。

ただし、株式会社というシステムは、株主が他の株主とともに団体を構成し、この団体の営業活動を通じてその経済的利益を獲得しようとするものです。そこで、株主が自己の利益のために、会社全体または他の一般株主の利益を不当に害する方法で株主権を行使する場合には、それが権利の濫用として許されない場面が出てきます。

もっとも、株主は本来自己の利益のために会社に参加しているのですから、具体的にいかなる場合に株主権の行使が権利の濫用になるかはとても難しい問題です。

そこで、株主権の行使が権利の濫用として否定された例を紹介します。
まず、仕手集団によって株式を買い占められ株主総会で取締役解任の決議等がなされそうになった場合に、会社から申し立てられた議決権行使禁止の仮処分が認められたケースがあります(東京地方裁判所商を63年6月28日決定)。この決定には理由が付されていませんが、申立書等を参考にすれば、理由は、会社の株式を買い占めた者が経営者側に高値で株式を買い取らせる目的のための手段として議決権を行使することは、権利の濫用となると判断したものと考えられます。

他にも、取締役会側が議決権を行使できる株式の過半数を制している等の事情から、株主による総会招集申請が、権利の濫用として許されないとされたケース(神戸地方裁判所尼崎支部昭和61年7月7日決定)、株主代表訴訟が、会社を困惑させて抵当物件の任意処分や会社からの自己への融資を実現させようとする目的に出た場合に権利の濫用として却下されたケース(長崎地方裁判所平成3年2月29日決定)、会社と株主が意思を通じて、ただ申立手数料の節約を図ることを目的として株主代表訴訟を利用することは許されないとされたケース(東京地方裁判所平成8年6月20日判決)、株主名簿の閲覧謄写の申請が、不当な意図・目的によるものであり、権利の濫用として否定されたケース(最高裁判所平成2年4月17日)などがあります。

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