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改正会社法(平成26年6月20日成立)の主な内容および企業経営に与える影響

1、新たなキャッシュアウト制度

新たなキャッシュアウト制度
〜株式の90%以上を所有する株主は、他の株主に株式を売り渡すよう直接請求できる〜

改正会社法においては、90%以上の株式を有する株主(特別支配株主)は、他の株主全員に対し、その株式全部を、自己(特別支配株主)に直接売り渡すよう請求できるようになります。新株予約権者がある場合は、その全員に対しても同様の請求ができます(改正会社法179条)。
特別支配株主が、この売渡請求をするためには、対象株式の売買価格、当該株式を取得する日(取得日)等を定めて、売り渡す側の株主(売渡株主)に請求しなければならず(改正会社法179条の2)、また会社の取締役会による承認を受けなければなりません(改正会社法179条の3)。これに対し売渡株主は、特別支配株主が提示した株式の価格が会社の財産の状況等の事情から著しく不当である場合で、売渡株主が不利益を受けるおそれがあるときは、特別支配株主に売渡請求をやめるよう請求できます(改正会社法179条の7)。また売渡株主は、取得日の20日前から取得日の前日までの間に、裁判所に売買価格の決定を申し立てることもできます。さらに、取得日から6ヶ月以内であれば売渡株主らは売渡請求の無効を訴えを起こすことができるものの(改正会社法条846条の2)、敗訴した場合に重過失等があったときは、特別支配株主に損害を賠償する責任を負います(改正会社法846条の9)。

これが今回創設されたキャッシュアウトの制度です。大企業から中小企業まで、会社の規模を問わず行うことができます。
定款で株式譲渡制限を設けている会社も同様で、この売渡請求による譲渡については、譲渡制限株式が譲渡されるのに必要とされる承認はあったものとみなされます(改正会社法179条の9第2項)。なお、ここでみなされる承認は、上記の取締役会による承認(改正会社法179条の3)とは別のものです。

現行法上、キャッシュアウトを行う方法としては、全部取得条項付種類株式の取得等があるものの、手続が煩雑で、特に中小企業にとっては現実的な選択肢ではありませんでした。それと比べると、特別支配株主が、少数株主を直接追い出す簡易な手続が創設されたことになります。

この制度は、資本による支配が徹底し、株式所有目的は配当を受けることであるというような大企業においては、対価さえ適正であれば合理性を持つ場合が殆どと思われます。他方、中小企業においては、少数株主が株式を持ち続ける理由には、親族としてその会社と関係を持ち続けたい等の感情的なものがあり得ます。裁判所が価格を定めたとしても、中小企業の株価は、少数株主が会社の資産だけを念頭に考えているより相当低額に決められることも多いのです。そのため新たな感情的な対立を生み出す可能性もあります。
裁判所としては、この新しいキャッシュアウト制度が濫用されないようにするという視点からも、適正なチエックを積み重ねていく必要があります。

(平成26年8月4日)

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