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改正会社法(平成26年6月20日成立)の主な内容および企業経営に与える影響

2、支配株主の異動を伴う新株発行等に株主が関与できる

支配株主の異動を伴う新株発行等に株主が関与できる
〜議決権の10分の1以上の株主の反対があれば新株発行等に株主総会の決議が必要〜

これまで会社法は、公開会社(株式の全部又は一部に譲渡制限を定めていない会社:会社法2条5号)は、取締役会決議によって新株発行及びその新株を誰に対して発行するか決めることができました。株式の2分の1を超えて所有する支配株主の異動が生じる新株発行でも、取締役会決議で決めることができたのです。
これに対し非公開会社(株式全部に譲渡制限が定められている会社)は、閉鎖的な会社で、株主が会社支配に大きな関心や利害関係を持っている会社ですから、どのような新株発行にも株主総会決議が必要とされています。

改正会社法は、公開会社においても、株主から経営を任されているに過ぎない取締役が、新株発行によって会社の支配を変える=過半数を超える株式を有する株主を新たに作り出すことが無制限で認められるべきではなく、一定の場合は会社の所有者である株主の同意が要求されるべきという視点から、次のような改正を行いました。

すなわち、公開会社において、新株発行によって議決権の二分の一を超えて株式を所有する者(以下「特定引受人」)が新たに出現する場合(以下「支配株主の異動を伴う新株発行」)は、当該株式の代金支払期日(以下「支払期日」)の2週間前までに、株主に対して特定引受人の指名等を通知しなければならない(改正会社法206条の2第1項)。その通知から2週間以内に、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対を会社に通知した場合、支払期日の前日までに株主総会決議による承認を受けなければならないことになりました(改正会社法同条4項)。
公開会社が新株予約権を発行するときも同様です(改正会社法244条の2)。

他方、株主総会招集手続には時間がかかりますから、株主総会決議を経ていては資金調達が間に合わず事業が継続できなくなるというケースもあり得ます。そこで改正会社法は、会社の財産状況が著しく悪化していて事業継続に緊急の必要があるときは、株主総会決議を経ずに支配株主の異動を伴う新株発行ができるとしました(改正会社法同条同項ただし書き)。

ベンチャー企業では、投資を誘因するためいろいろな種類の株式が発行されることがあり、株式の一部だけ譲渡制限をして譲渡制限のない株式も発行している場合があります。このような会社は、「公開会社」であり、上記改正会社法のルールに服します。
上場企業においても、10%の株主が反対すれば株主総会決議が必要という今回の改正は、会社の支配争奪戦の道具になり得ます。 したがって、公開会社においては、支配株主の異動を伴う新株発行を行う場合は、予め過半数の議決権を有する株主の同意を得ておくべきと言えます。
手続にかかる時間の観点からも、支配株主の異動を伴う新株発行についての株主への通知を2週間前ぎりぎりで行って、それから10分の1以上の株主の反対が明らかになって株主総会決議が必要となった場合、予定していた払込期日までに株主総会決議が得られなくなる可能性は高いといえます。時間的余裕を持った株主への通知が必要です。

上記のとおり、緊急に資金調達が必要な場合は株主総会決議は不要とされています。しかしそのような緊急状態であったことの立証責任は会社側にあります。評価をめぐって紛争が長期化する恐れがあります。10分の1の株主の反対があっても株主総会決議を経ないというケースは、よほどの著しい緊急事態のとき、例えば、ここでニューマネーを新株発行の方法で入れないと手形不渡りを出す。社債の債務不履行を来す等の場合に限定されると考えておくべきです。

(平成26年11月6日)

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