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改正会社法(平成26年6月20日成立)の主な内容および企業経営に与える影響

8、債権者を害する会社分割における債権者保護

債権者を害する会社分割における債権者保護
〜債権者は承継会社に対しても請求できる〜

会社の事業を別の会社に譲渡する組織的な手続が会社分割です。
これまでこの会社分割を濫用して債権者を害するケースが現れていました。例えば、新会社を作ってそこに利益の出る事業を譲渡する会社分割を行う。それまでの会社(以下「分割会社」)の銀行等の債務は、新会社に引き継がず、旧会社だけが負担する。旧会社はその後破産させるなどのパターンです。

そこで今回の改正法は、新会社(又は既存会社で事業の譲渡を受ける会社)(以下、両者を併せて「事業承継会社」)に承継されない債権者(以下「残存債権者」)を害することを知って会社分割がなされた場合は、残存債権者は、事業承継会社に対し、承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求できるようになりました。残存債権者が、このような会社分割が行われたことを知ったときから2年以内に請求や請求の予告をしないと残存債権者はこの権利行使ができなくなります(改正法759条、761条、764条、766条)。
残存債権者を害することを知っていることが要求される会社は、新設会社へ事業を承継する場合は分割会社だけであり、既存の会社に事業を承継する場合は分割会社及び事業承継会社の双方です(759条)。
また、分割会社が破産、民事再生手続、会社更生手続の開始決定を受けたときは、債権者を害する行為に対しては否認権の行使など、管財人等が対応することになりますから、残存債権者が今回の改正で認められた権利を行使することはできなくなります(改正法759条、破産法44条、民事再生法40条の2等)。

今回の改正法は、残存債権者を害する会社分割について、会社分割自体を取り消す効果ではなく、事業承継会社に対し承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求できるという効果を定めたことに一つの特徴があります。そして今回の改正法は、承継した財産の価額を限度として履行の請求を認めています。ですから、「承継した財産の価額」がどのような範囲かが今後問題となります。
この点、立法過程(会社法制部会資料20の12頁)では、承継会社等が分割会社から財産だけでなく債務も承継した場合、当該財産の価額から当該債務の価額を差し引いた残額ではなく、当該財産自体の価額であると解することとなると考えられる旨説明されています。「承継した財産の価額」という文言を字義どおりに読めばそのようになるでしょう。今後の裁判所の判断が注目されるところです。

また、事業再生の場面において会社分割を使って新設会社に利益の出る部門を移して事業を再建する、いわゆる第二会社方式では、改正法による上記規定が適用されるリスクがあります。これは、残存債権者を害しない第二会社方式とはどのようなものかという問題です。
この点、第二会社方式を取らなければ倒産するという状況があり、会社分割をせずに破産した場合に比べれば、会社分割をしたときの方が残存債権者に対する弁済が多くなる=残存債権者に対して清算価値の保証がなされている場合には、債権者を害するとは言えないと考えるべきです。

なお、会社分割と類似の効果をもたらす事業譲渡の場合も、債権者を害する事業譲渡に対応するため、今回の改正で会社分割と同様の規定が新設されました(改正法23条の2)。

(平成27年1月7日)

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