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民法改正(債権法改正)の重要ポイント

第2 改正の重要ポイント

11 賃貸借
(1)賃貸人の地位の移転
(要綱仮案 第33、4、(2)〜(5))(改正民法605条〜605条の4)
【ポイント】
ア 不動産の賃借人が目的物件の引き渡しを受けたり賃借権登記をした後に、不動産が譲渡された場合、原則として賃貸人の地位は不動産譲渡人から譲受人に移転する。
イ この場合、敷金返還債務、必要費及び有益費償還債務も譲受人に移転する。
【改正の理由】
ア、イ 引き渡し等の後目的物件が譲渡されれば購入者が賃貸人となる点はこれまでの判例どおり。
今回の改正では、その場合、敷金返還債務、必要費及び有益費償還債務も新賃貸人に移転するかについても明文規定が置かれた。
【影響等】
判例(最高裁昭和44年7月17日判決)は、旧所有者の下で生じた延滞賃料等の弁済に敷金が充当された後の残額についてのみ、敷金返還債務が新所有者に移転するとしていた。
今回の改正でも、敷金返還債務のうちどれだけが新所有者に移転するのかは明定されなかった。





敷金全額が代金額から控除されて賃貸物件の売買代金額が決まる場合が多いことから、特に敷金返還義務の一部だけを新所有者に移転しようとする場合は、物件売買当事者間でその旨の特約がされるべき。この場合、新所有者としては、賃借人のあずかり知らぬ内容を賃借人に主張することは容易ではないと考えられるので、あらかじめ賃借人の同意を得るべき。
※必要費とは、物件の維持のために必要な修繕費(例えば、トイレや雨漏りの修理)。
有益費とは、物件の価値を増加させるための費用(例えば、増改築)。
(2)敷金
(要綱仮案 第33、7、(1)(2))(改正民法622条の2)
【ポイント】
ア 敷金は、賃借人の債務を担保するために賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。
イ 賃貸人が、敷金から賃借人の債務を控除した残額を賃借人に返還しなければならない時期は、賃貸借契約が終了しかつ物件の返還を受けたとき、又は、賃借人が適法に賃借権を譲渡したとき。
ウ 賃貸人は、賃貸借期間の途中でも、賃借人の債務弁済に敷金を充当でき、他方賃借人は、そのような充当することを賃貸人に請求できない。
【改正の理由】
これまでは敷金の定義、敷金返還債務の発生要件、充当関係などの規定はなく、これを明らかにした。
【影響等】
ア、ウ 定義はこれまでの判例や一般の理解どおりのもの。ウ、もこれまで多くの賃貸借契約に存在してた条項が取り入れられたもの。
イ 賃貸人が、賃借人の債務へ充当した残額を賃借人に返還しなければならない時期は、単に賃貸借が終了したときではなく、それに加えて目的物が返還された時と明定された。なお、賃借権が譲渡されたときも敷金返還債務が生ずる。
この改正は、賃貸借契約が終了してもそれだけでは敷金返還義務はないとするところに意義がある。ただし返還時期について、賃貸人、賃借人の間で別の時期、例えば退去後1ヶ月以内等と契約することは可能。
(3)賃貸人の修繕義務の範囲、賃借人の修繕権
(要綱仮案 第33、8、(1)(2))(改正民法606条、607条の2)
【ポイント】
ア 賃貸人は修繕の義務を負うけれども、賃借人の責任で修繕が必要となった場合はその義務を負わない。
イ 賃借人は、次の場合は自ら修繕できる。
(ア)修繕が必要なことを賃貸人に通知してから、又は賃貸人が修繕が必要なことを知ってから、相当期間が経過しても賃貸人が修繕しないとき。
(イ)急迫の事情があるとき。
【改正の理由】
ア 賃借人の責任で修繕が必要となったときは賃貸人は修繕義務を負わないかどうか必ずしも明らかでなかったものを明定した。
イ 賃貸人が所有者であるにもかかわらず、物理的変更を伴うことが多い修繕を賃借人が権利としてできる場合を明定した。
【影響等】
ア 修繕が必要となった原因が賃貸人、賃借人のどちらにあるかは争われ得る。
イ 賃貸借契約でこれと異なる定めをすることはできる。
相当期間がどれくらいかは、修繕の具体的内容や修繕の緊急性によって定まると考えられる。直ちに賃借人が修繕して構わない急迫性は、賃貸目的物が賃貸人の所有であることが多いにも拘わらず、賃借人がすぐに修繕できる場合とはどのような場合か、という観点で判断されると考えられる。
(4)原状回復義務
(要綱仮案 第33、13、(3))(改正民法621条)
【ポイント】
賃借人は、通常損耗(経年劣化を含む)について原状回復する義務はなく、それ以外の損耗についても賃借人の責任ではないものについて原状回復する義務はない。
【改正の理由】
賃借人の現象回復義務についての基本的な考え方を明定した。
【影響等】
これは任意規定であり、契約によって賃借人の原状回復義務を広げることが可能。
最高裁平成17年12月16日判決は、通常損耗を折り込んで賃料が定められるから、特約がある場合を除いて、賃借人は通常損耗回復義務を負わないとしており、今回の改正もこれを踏襲しようとするものにすぎない。改正によっても、特約で通常損耗等を賃借人に負担させることはできる。
ただしその特約は、賃借人が原状回復義務を負う範囲、内容が具体的に明らかにされていることを要する。
(5)賃貸借の存続期間
(要綱仮案 第33、3、(1)(2))(改正民法604条)
【ポイント】
賃貸借契約の最長期間が、これまでの20年から50年に伸ばされた。更新期間も50年を超えることができない。
【改正の理由】
建物所有目的以外の土地賃貸借でもゴルフ場敷地や太陽光発電パネル設置敷地等、20年を超える賃貸借契約が求められる場合があるので期間が伸ばされた。
【影響等】
建物賃貸借では、既に借地借家法で賃貸借期間の上限は撤廃されている。建物所有目的の土地賃貸借も、借地借家法で原則として賃貸借期間の上限はない。

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