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民法改正(債権法改正)の重要ポイント

第2 改正の重要ポイント

2 詐害行為取消権
【影響等】
(1)詐害行為として取り消される範囲の限定
(要綱仮案 第16、3、4)(改正民法424条の2、242条の3)
ア 債務者が相当の対価を得て財産を処分した行為(以下「当該行為」)については、次の要件のいずれも満たす場合にのみ、詐害行為として取り消すことができる。
(ア)当該行為が、不動産の売却やその他の財産の種類の変更であって、債務者が隠匿、無償の供与等の債権者を害する処分(以下「隠匿処分」)をする恐れを現に生じさせるものであること。
(イ)債務者が、当該行為当時、対価として得た金銭等を隠匿処分する意思を有していたこと。
(ウ)受益者(当該行為によって利益を受けた者)が、当該行為の当時、債務者が隠匿処分の意思を有していたことを知っていたこと。
イ 債務の弁済などの債務者消滅行為や担保提供行為(以下「弁済等」)については、次の要件のいずれも満たす場合にのみ、詐害行為として取り消すことができる。
(ア)弁済等が、債務者が支払い不能(支払い能力を欠くため、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態)の時に行われたこと。
(イ)弁済等が、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたこと。
ウ 上記イ、の弁済等が、弁済期が到来していない債務の弁済その他債務者の義務でないのに行われた場合において、次の要件のいずれも満たすときは、上記イ、にかかわらず、詐害行為として取り消せる。
(ア)弁済等が、債務者が支払い不能になる前30日以内に行われたこと。
(イ)弁済等が、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたこと。
【改正の理由】
詐害行為取消しの対象が不明確かつ広範だと、経済的危機に直面した債務者と取引する相手方が萎縮し、再建可能性のある債務者が破綻に追い込まれるおそれがある。そこで、債務者の財産や経営状況が悪化した場合の処分行為について、詐害行為取消の対象となる範囲を限定して明定した。
これによって、支払い不能前に行われる債務弁済や担保付与は、原則として詐害行為取消の対象とならなくなる。 ただし、支払い不能の前であっても、債務者の義務に属さない担保提供や債務消滅行為については、支払い不能になる前30日以内になされた場合等は詐害行為取消の対象となる。
【影響等】
破産法上の否認の制度と基本的に平仄を合わせた改正である。したがって、破産法上で否認されないのに詐害行為取消として取り消されるといった齟齬がほぼなくなる。
危殆状況に陥って事業の再建を目指す場合、不動産処分や担保設定、特定の債権者への弁済が、詐害行為取消や否認の対象とならないかは常に意識すべきものである。
これまで抽象的な規定しかなく範囲が不明確だった詐害行為取消について、範囲が限定され明定されたことで、事業再建はやり易くなる。
(2)過大な代物弁済等の取り扱い
(要綱仮案 第16、5)(改正民法424条の4)
【ポイント】
消滅した債務額より受益者の受けた給付が過大な場合は、上記(1)イ、にかかわらず、債務者と受益者が債権者を害することを知っていれば、消滅すべき債務の額を超える部分について詐害行為として取り消せる。
【改正の理由】
過大な弁済部分は贈与と同じであるから、一般的な詐害行為の要件(債務者と受益者が債権者を害することを知ってした場合)を満たせば取り消せるものとした。これも破産法と平仄を合わせたものである。
【影響等】
弁済といっても、過大な代物弁済等に対してはこのリスクがあることを認識する必要がある。
(3)転得者との関係
(要綱仮案 第16、6)(改正民法242条の5)
【ポイント】
ア 受益者からの第1次転得者が現れた場合、詐害行為の一般的な成立要件(債務者の行為当時、債務者と受益者が共に債権者を害することを知っていたこと)に加え、第1次転得者が、転得の当時、債務者の行為が債権者を害することを知っていたときのみ、債権者は、転得者に対し、詐害行為取消を請求できる。
イ 第1次転得者以後の転得者が現れた場合、全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者の行為が債権者を害することを知っていたときのみ、債権者は、転得者に対し、詐害行為取消を請求できる。
【改正の理由】
判例(最高裁昭和49年12月12日判決)は受益者善意・転得者悪意の場合でも転得者に対する詐害行為取消権の行使を認めている。しかし、破産法は、一旦善意者を経由すればその後の転得者には否認権を行使できないとして、転得者の取引安全を確保している。今回の改正は破産法に平仄を合わせた。
【影響等】
この場面でも破産法との齟齬がなくなった。
※詐害的会社分割における債権者保護(平成26年会社法改正)
(平成26年改正会社法:平成27年5月ころ施行予定)
これまで、新会社を作り、そこに利益の出る事業を譲渡する会社分割を行う。それまでの会社(以下「分割会社」)の銀行等の債務は、新会社に引き継がず、旧会社だけが負担する。旧会社はその後破産させるなどの方法で債権者を害する会社分割が行われることがあった。
平成26年改正会社法によって、新会社(又は既存会社で事業の譲渡を受ける会社)(以下、両者を併せて「事業承継会社」)に承継されない債権者(以下「残存債権者」)を害することを知って会社分割がなされた場合は、残存債権者は、事業承継会社に対し、承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求できるようになった。
残存債権者が、このような会社分割が行われたことを知ったときから2年以内に請求や請求の予告をしないと残存債権者はこの権利行使ができなくなる(改正法759条、761条、764条、766条)。
残存債権者を害することを知っていることが要求される会社は、新設会社へ事業を承継する場合は分割会社だけであり、既存の会社に事業を承継する場合は分割会社及び事業承継会社の双方である(759条)。
また、分割会社が破産、民事再生手続、会社更生手続の開始決定を受けたときは、債権者を害する行為に対しては否認権の行使など、管財人等が対応することになるため、残存債権者が今回の改正で認められた権利を行使することはできない(改正法759条、破産法44条、民事再生法40条の2等)。
今回の改正法は、残存債権者を害する会社分割について、会社分割自体を取り消す効果ではなく、事業承継会社に対し承継した財産の価額を限度として当該債務の履行を請求できるという効果を定めたことに一つの特徴がある。





承継した財産の価額を限度として履行の請求を認めているので、「承継した財産の価額」がどのような範囲かが今後問題となる。
立法過程では、承継会社等が分割会社から財産だけでなく債務も承継した場合、当該財産の価額から当該債務の価額を差し引いた残額ではなく、当該財産自体の価額であると解することとなると考えられる旨説明されている。今後の裁判所の判断が注目される。

なお、会社分割と類似の効果をもたらす事業譲渡の場合も、債権者を害する事業譲渡に対応するため、今回の会社法改正で会社分割と同様の規定が新設された(改正法23条の2)。

≪ 第1 改正経緯

改正の重要ポイント3 消滅時効 ≫

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