企業法務・企業再生のためのリーガルサービスを目指します 中島成総合法律事務所

民泊の法的現状(2016年6月13日現在)

3、民泊と不動産賃貸借をめぐる法的論点

【論点A】民泊は転貸借に当たるか

(i)無断転貸が禁じられている物件の賃借人がその物件で民泊を営んだ場合、無断転貸を理由に賃貸借契約を解除できるか。

ホテル、旅館を利用する契約は、「宿泊契約」(旅館、ホテル側が宿泊サービスを与え、そのサービスに対して宿泊客が対価を支払う内容の契約)であって、賃貸借契約ではない。
民泊は、宿泊サービスを提供するものだから、賃貸借契約ではなく、宿泊契約。
民泊も、ホテル、旅館と同じように、客が泊まる前の清掃・シーツ交換等は民泊事業者側が行い、宿泊費用には水道光熱費が含まれる。民泊は、宿泊場所の提供をはじめとするサービスを提供するもの。

ただし、宿泊契約は、物の使用対価を払うという賃貸借契約の要素を含んでいるので、賃貸借契約のルールがどの程度まで妥当するか、必ずしもはっきりしない。

<無断転貸による解除を認める民法612条は(類推)適用されるか>
類推適用されると考えられる。
(理由)
賃借人が無断で民泊業をして利用者を宿泊させる場合、賃貸人としては、信頼関係のない者(客)に物件を相当期間使用されるのであり、そのことが反復継続される状況。これは無断転貸されたときと同じ利益が侵害された状況といえるから。
(A)賃貸人の同意を得て賃借人が賃借物件で民泊を営んだ場合、賃貸人は直接転借人に賃料を請求できるとする民法613条が、賃貸人と民泊利用者(民泊の客)との関係でも類推適用されるか。
類推適用されないと考えられる。
(理由)
ホテル、旅館などの宿泊契約において対価としての宿泊料が得られるのは、宿泊サービス全体によるものであって、単に物件を賃貸(転貸)したことによるものではない。サービス努力によるところが相当大きい実態がある。それなのに宿泊料を賃貸人が直接取得してよいと解するのは不合理だから。

【論点B】民泊やシェアハウス利用の差し止め

※ シェアハウスの適法性

(i)民泊の差し止め
大阪地方裁判所 平成28年1月27日仮処分決定(読売新聞)
マンションの部屋に旅行者を宿泊させる民泊の是非が争われ、大阪地裁が、マンション管理組合の主張を受け容れて、部屋の区分所有者に対し、民泊行為の差し止めを命じる仮処分決定が出された。
特定の部屋への外国人の出入りが急に増えたため、管理組合が民泊を行っていると判断して差し止めの仮処分を申請したもの。

区分所有法57条には、全体の利益に反する行為を禁じる規定があり、また同マンションの管理規約には「専ら住居として利用する」との条項があった。
(A)シェアハウスの差し止め(下記スライド)
東京地方裁判所 平成27年9月18日判決
東京都荒川区の区分所有建物(マンション)の管理組合の理事長で、区分所有法上の管理者であるXは、区分所有者の1人であるYに対し、Yがシェアアウス事業を営んでおり、マンション管理規約及び区分所有法57条1項(全体の利益に反する行為を禁じ、管理組合等がその行為の停止等を求めることを認めた条項)に基づき差し止め等を求めた。

裁判所は、シェアハウスの意味は一義的ではないとしつつ、Yによる管理規約違反を認め、Yの行為(※)の差し止めを命じた。
※「寝室その他の個室として用いることができる区画部分(玄関、便所、洗面所、浴室、台所を除く。)の数が3を超えることとなる間仕切り(天井に達しないものを含む。)を設置して、これを複数の使用契約(賃貸借契約、使用貸借契約、施設利用契約を含む。)の契約者らに使用させる行為」等。
民泊の法的現状 挿入図面
※ シェアハウスの適法性
・国土交通省平成25年9月6日「違法貸しルーム対策に関する通知について」は、多人数の居住実態がある「貸しルーム」は、建築基準法上の「寄宿舎」(2条2号)に当たり、部屋は「居室」(2条4号)に当たるとしている。
この場合、防火関係規定の他、採光、間仕切壁等に関する基準を満たす必要がある。
・平成27年4月30日時点の国土交通省の調査では、調査対象となった貸しルーム1950件中建築基準法違反が発覚したのは1234件(6割以上)だった。
・旅館業法との関係では、シェアハウスでは利用者との間に賃貸借契約があるとされる(東京地方裁判所平成27年7月16日判決)。シェアハウスは、生活の本拠を置くことが想定されているので、そのような運営をしている限りは旅館業法にいう旅館業に当たらず、賃貸借と考えられる。

【論点C】民泊物件の明渡し訴訟はどうするか。

賃貸借契約に違反して賃貸物件で民泊営業がされた場合、賃貸借契約を解除して賃借人(民泊業者)に対する明け渡しを命じる判決を取得しても、民泊の客は賃借人ではないから、それだけでは強制執行できない。民泊の客に対する明け渡しを命ずる判決を得なければならない。

しかし、民泊では、実際に物件を占有(滞在)している者が頻繁に変化するから特定困難。どこの誰かも不明の場合があり得る。

そこで、「債務者不特定の占有移転禁止の仮処分」(民事保全法25条の2)を訴訟の前に申し立てる。現地調査等の上、債務者が不特定であり、かつ特定することを困難とする事情が認められる場合、この申立てが認められる。

その後訴訟を提起することで、強制執行時に占有している者に対しても明け渡しの強制執行ができる。

【論点D】民泊目的での一棟貸しも規制緩和で可能となるか。

厚労省「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」では、「マンションの一棟貸しやその大半を民泊として使用するような形態の民泊は、既存のホテル・旅館営業と何ら変わることはないため排除するべきである」との意見が出されている。
このような形態の民泊業は、新法下でも規制される可能性がある。

※ ウィークリーマンション、マンスリーマンションの適法性
旅館業法にいう「人を宿泊させる営業」は、施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること、利用者が宿泊部屋に生活の本拠を有さないこと、の2点とも満たすものである(昭和63年1月29日衛指第23号 厚生省生活衛生局指導課長回答・以下「厚生省回答」)。

厚生省回答によれば、ウィークリーマンションは旅館業法の適用対象となるとされている。1〜2週間という1ヶ月に満たない短期間の利用実態からして衛生の基本的な責任は営業者にあり、利用者が生活の本拠として利用するものでもないから。
厚生省回答は、マンスリーマンションについて具体的には言及していない。
そこで検討すると、1ヶ月を超える滞在実態がある場合は、衛生の基本的な責任が利用者にあり、生活の本拠として利用しているとされやすいと考えられる。したがって、マンスリーマンションは、ウィークリーマンションより、旅館業ではなく賃貸借契約と評価されやすいと考えられる。

結局、名称の如何ではなく、営業実態における利用者の利用期間によって総合的に判断される。

【論点E】民泊利用者が起こした近隣トラブルにつき、民泊事業者(物件を賃借して民泊事業を行っている者)が法的責任を負うか。

「賃貸人は、賃借人に対して、目的物を使用・収益させる義務を負っているのであるから、……賃貸借期間中、本件貸室を住居として使用するに適する平穏な状態で使用収益させる義務を負っている。」(東京地方裁判所平成24年3月26日判決)
この判決は、賃借人同士のトラブルにおいて、賃貸人が、迷惑行為を行った賃借人に対し、解除を前提に改善を要求せず放置したような場合は、賃貸人が迷惑行為を受けた側の賃借人から損害賠償を請求される可能性があると判断した。

民泊事業者は、業として宿泊サービスを提供する者だから、賃貸人にまして、利用者が平穏な状態で宿泊できるようにする義務があると考えられる。
したがって、民泊利用者間で騒音等迷惑行為があった場合、その状況を改善するための管理を怠った民泊業者は、損害賠償義務が生じると考えられる。ホテルで、隣室の騒音がひどくフロントに対処を申し入れたのに、何らの対応もされず放置した場合と同じ。

【論点F】民泊利用者の宿泊料の保証

民泊利用者が民泊業者に支払う対価は、「宿泊料」であって「家賃」ではない。しかし、宿泊契約は賃貸借契約の要素を含むので、家賃の場合のように保証人又は保証会社が保証することも考えられる。

ただし実際は、保証人又は保証会社が代位弁済した後、外国人旅行客に求償することは困難だから、民泊業者による宿泊代確保は、宿泊料前払いによると思われる。前払い完了後設定された期間しか使用できないカードキーの利用もあり得る。

≪ 2、法制度化に向けた検討状況

以上

目次へ戻る

お問合わせ

企業法務・倒産法・会社の民事再生 中央区銀座 中島成総合法律事務所